いつもなら
普通じゃない世間に流布していない
ひねくれたポスターを
冒頭に張るのですが
今回は
普通の有名なやつにしました。
理由は・・
これが好きだから。
・・・・。
というわけで
日本のみんなが知ってるティムさんの映画、
「チャーリー・アンド・ザ・チョコレートファクトリー」です。
みんなが知ってる
つまり
日本で一番、ヒットしたティムさんの映画。
データー的には知りませんが
一か月以上上映していたので
ヒットした・・と思う。
ティムさんの映画はいつもすぐに終わるから・・。
ま、ティムさん人気というよりは
デップさん人気でしようが・・。
それならこの映画、
いままでのティムさん映画と違っているのか?
いいえ、
全然、違っていません。
ティムさん世界全開バリバリです。
じゃ
なんでこれが日本でヒットしたのか?
実は
この映画でティムさん、少しだけ変わったのです。
どこが変わったのか?
それはまた後でゆっくりボチボチと・・。
これはもう典型的な
「ふしぎの国のアリス」型の映画です。
それがどういうものかというと
つまり
子供が、
ふしぎの国に入り込んで
最初は
やってくるふしぎに
ただ、ただ驚いてふしぎがっているが
やがて
そのふしぎに積極的に係わり
そのふしぎ世界を変えていく・・。
ほとんど
この映画の構成と同じです。
「ふしぎの国のアリス」の映画評のところでも書いたけど
この構成の最大の利点は、そのふしぎ世界をたっぷりと楽しめるということ
そして欠点は、単調で退屈である・・という点。
ここまで
ティムさんを
好きだ、素晴らしいとほめ続けながら
ここでぶっちゃけて言うのもなんですが・・
ティムさんの映画は
いつも途中で少しダレます。
正直
趣味の世界に走り過ぎると
完全に構成がだらけてしまいます。
それを
少し反省したのか
それとも変わったことをやりたかったのか
それとも
オリジナルが好きなのか
もしかして
ギャラが高かったのか
ティムさん、「猿の惑星」のリメイクという
最悪な映画を撮ってしまいました。
もちろん
大コケしました。
僕はここでティムさん終わった・・かと
思いました。
ところが
次回作の「ビックフィッシュ」を大ヒットさせました。
これは僕の中では
ティムさんの
最高傑作だと思っていますが
この作品で彼は
最強の武器を手に入れました。
これによって
ティムさんの映画人生は
半永久的な安定を保障されたと言ってもいいでしよう。
いまさら
この映画の物語をクダクダ書いてもつまんないし
元々
アリス型構成の映画に
ストーリーなんか、あってないようなものですから
あまり意味もありません。
ティムさんがこの映画を作ろうとした動機は
もう主人公のチャーリーに魅かれたからでしよう。
自分の幼年期のトラウマの反動で
過激に自分の世界を作り上げ
そこに閉じこもってしまった青年。
もう
ほとんどティムさん、本人としか思えないこのキャラ。
そこに
子供たちを招待して
その世界を見せて
悦に入る姿。
これも、自分の世界を映画という巨大な工場に誘いこんで
みんなに見せて悦に入るティムさんそのものです。
しかしであります。
今回は違っていた。
なんとティムさん、自分の世界を変えようとしたのです。
自分のトラウマを克服しようとしたのです。
トラウマの原因となった父親を演じるのは
クリストファー・リーである。
ヴィンセントプライス、ピーターカッシングと並んでホラー黄金期を作り上げた男。
父親役は、彼でなければならなかった。
どうしてかは、彼のデビュー短編の「ビンセント」を観れば
一目瞭然です。
この父親との和解によってチャーリーのトラウマを
克服させたのだ。
これはもう
ティムさん映画においては画期的な展開であります。
常に自分の世界を展開させて
そのまま突っ走るだけだったのに・・。
えらい!!
ティムさん
大人になりました!!
前作の「ビックフィッシュ」で手に入れた
武器とは
「感情」です。
ティムさんは大人になることによって
人間の感情の表現を手に入れたのです。
それは
ティムさんにとって最大の庇護者。
父親を、
理解し、克服することで
得られるものである・・ということに
気がついたのであります。
自分の巨大な世界を持ちながら
それで感情を表現できるようになった
ティムさんにもう敵などいません。
悪戦苦闘の末に
アメコミ映画の世界を
自分の世界観の中に取り込み
それを成熟させ
感情をも表現させてしまう。
ティム巨匠(いきなり巨匠だ)と
他のアメコミ監督と一緒にしてもらっては困る。
僕は
アメコミであろうと
漫画であろうと
小説であろうと
それを、自分の中に取り込み
そのひとの世界観で処理できていない映画は
たとえ出来が良くても
愛することはできない。
そんな映画は、
そのうちパソコンが自動的に作るようになる。
映画も、
そして
他の表現も
その監督の「感情」が出てなんぼなんだ。
そこに
小手先の器用さなど必要ない。
映画の出来なんてどうでもいい。
僕が観たいのは
まあまあ出来のいい映画ではない。
愛すべき映画だ。
この映画のラストシーン
自分の工場のなかにある
人口の雪が降り積もる
家
その風景こそが
いまのティムさんの感情なのだ。